訪問入浴 介護とは? サービスの流れや費用について解説
「 訪問入浴 では、どのようにお風呂に入れてくれるの?」
「 訪問入浴 を利用するためにはどうすればいいの?」
要介護者本人の入浴が自力では難しかったり、家族のサポートだけでは困難な場合、専門スタッフが自宅に訪問し、専用の浴槽を使って入浴をサポートしてくれる介護サービスです。
サービスを受けることで、ご本人の清潔が保たれて、家族の負担も軽減されます。
この記事では訪問入浴サービスを受けるための流れ、必要な条件や費用などについて詳しく解説していきます。
訪問入浴 サービスはこんな方におすすめ
訪問入浴では、入浴介助はもちろんのこと看護職員による入浴前後の健康チェックも行われるため、寝たきりの方や自宅の浴槽が狭く入浴が困難な場合におすすめのサービスです。
入浴は体力を消耗しするため、体調の変化が激しい方は、看護職員のサポートがあると入浴しやすいでしょう。
また、家族が入浴介助に慣れていないと、浴室内外での転倒など事故が起きてしまい、本人・家族ともに大きな負担がかかります。
在宅生活を送る上で、負担なく穏やかな気持ちで過ごせるよう、訪問入浴サービスがあります。
※自宅を訪問して入浴の介助を行うサービスは、訪問入浴介護以外に「訪問介護」があります。 訪問介護では、自宅の浴槽を使用して、介護スタッフが入浴介助を行います。
※訪問介護はこちらの記事で解説しています。
訪問入浴 の概況
訪問入浴介護事業所数は年々減少傾向にある一方で、直近の受給者数、サービス費用額はいずれも増加傾向にあります(要介護3以上の利用者が約9割を占めています)。
引用元:厚生労働省
訪問入浴 の利用条件
- 要介護(1〜5)認定を受けている方
- 要支援(1〜2)の方には「自宅に浴室がない」などの条件付きで訪問入浴を受けられる「介護予防訪問入浴介護」というものがあります。
- 医師から入浴を許可されている方
- 訪問入浴サービスの利用を検討している場合は、主治医に入浴許可を貰っておくとスムーズでしょう。人工呼吸器やストーマなどの医療機器を使用していても、主治医から入浴の許可が出ていればサービスを利用することができます。
以上の条件を満たし、居宅介護支援事業所(要支援の場合は「地域包括支援センター」)に相談の上、ケアプラン作成、訪問入浴サービス契約となります。
サービス利用・当日の流れ
訪問入浴サービス当日は、看護職員1名以上・介護職員2名以上の計3名以上(介護予防訪問入浴介護の場合は看護職員1名以上・介護職員1名以上の計2名以上)が訪問入浴専用の浴槽を運んで自宅まで来てくれます。
家庭ではバスタオル・着換え・替えのシーツなどを用意しておく必要があります。 入浴に必要なものは事前に伝えられます。
入浴の流れは主に次の通りです。
- 健康チェック
- 血圧・脈拍・体温など、利用者が入浴可能な健康状態かを看護職員が確認します。
- もし体調が優れない場合であれば、半身浴や清拭に変更することも可能なケースもあります。
- 脱衣・お湯の準備
- 健康状態に問題がなければ介護スタッフが利用者の脱衣とお湯の準備を行います。
- マットや防水シートなどで床を保護して、浴槽などの機材を搬入してから浴槽に適温のお湯を張ってもらえます。
- ベッドから浴槽に移動し入浴開始
- 利用者の希望に沿って、スタッフ3名で全身浴・部分浴・清拭を行います。
- 上がり湯
- 入浴の仕上げにシャワーでお湯をかけます。
- 浴槽からベッドに移動
- 着衣・健康チェック
- 看護職員が着衣と入浴後の健康状態を確認します。
- 血圧・脈拍・体温などを計測し、体調の変化や異常が無いかどうかを確認して、必要があれば軟膏の塗布などのケアを行ってくれます。
- 片付け
- 看護師による健康チェックと同時進行で、介護スタッフが浴槽などの片付けを行います。
- 使用した機材を片付け、入浴の際に移動した家具等を元の位置に戻します。
- 終了
- 訪問入浴サービス終了となります。
訪問入浴は、設置から片付けまでを利用者のすぐ近くで行います(2畳〜3畳ほどのスペースが必要です)。
全身浴ができない場合は、シャワー浴になります。 洗髪や陰部洗浄、手・足だけの部分浴で対応することになります。
また、体調不良時などはお湯をしめらせたタオルで体を拭く「清拭(せいしき)」に切り替える場合もあり、その日の心身の状況に合わせて変更することができます。
ここまで解説した訪問入浴の流れは一般的なものですが、サービス事業所によっては入浴後の「保湿ケア」「爪切り」「シーツ交換」などのサービスを行ってくれます。
サービスにかかる費用
訪問入浴の費用は「要介護」「要支援」で分かれており、「全身浴」「部分浴」「清拭」でも変わってきます。 費用の目安は次の通りです(2024年4月1日時点)。
介護度 | 洗浄範囲 | 1回あたりの費用 |
要介護1~5 | 全身浴 | 1,266円 |
部分浴 | 1,139円 | |
清拭 | 1,139円 | |
要支援1・2 | 全身浴 | 856円 |
部分浴 | 770円 | |
清拭 | 770円 |
※介護保険1割負担の場合の自己負担額です(所得により2~3割負担の場合あり)
※費用は地域区分により変動します
その他にも次のポイントで費用が変わります。
- 訪問するスタッフに看護職員がいない場合(減額)
- 要介護者の訪問入浴を看護職員1名・介護職員1名の計2名で行う場合(減額)
- 地域加算、介護職員処遇改善加算など各種加算がある事業所の場合(増額)
訪問入浴の所要時間
訪問入浴の所要時間ですが、準備から片付けまでを45~60分程度で行っている事業所が大半です。内訳は次の通りです。
(入浴前)健康チェック・浴槽の準備・脱衣:15〜20分
(入 浴)10分程度
(入浴後)健康チェック・浴槽の片付け・着衣:15〜20分
※入浴後に保湿ケアや爪切りなど行う場合延長することもあります。
※サービスの提供時間は事業所によって差がありますが、おおむね平日朝8時半~夕方18時までくらいです。
訪問入浴で起こるトラブルとは?
- 転倒事故
- 入浴中、入浴前後は体温の変動が大きいため、訪問入浴の際に転倒事故が起きてしまう可能性は十分にあります。 細心の注意を払っても転倒などの事故は訪問入浴でも起こりえます。
- 入浴拒否
- 裸になることに対する抵抗感や、認知症の症状などが原因で直前になって入浴を拒否してしまうケースもあります。
- 利用者とスタッフの相性や性別の差異など円滑にサービスが受けられるよう事前確認をしておくと良いでしょう。
2024年度介護報酬改定内容
2024年度介護報酬改定では、訪問入浴介護は基本報酬が引き上げになり、『2024年4月1日』に施行される予定となっています。
引用元:厚生労働省
基本報酬
サービス名称略称 | 算定項目 |
訪問入浴介護費 | 1,266単位/回(1,260単位/回) |
介護予防訪問入浴介護費 | 856単位/回(852単位/回) |
訪問入浴介護の各加算・減算
サービス名称略称 | 算定項目 |
認知症専門ケア加算(Ⅰ) ※注1 | 1日につき3単位(単位数に変更なし) |
認知症専門ケア加算(Ⅱ) ※注2 | 1日につき4単位(単位数に変更なし) |
看取り連携体制加算 (新設) ※注3 | 64単位(死亡日及び死亡日以前30日以下に限り1回につき) |
介護職員等処遇改善加算(Ⅰ) (新設) ※注4 | 所定単位数×100/1000 |
介護職員等処遇改善加算(Ⅱ) (新設) ※注4 | 所定単位数×94/1000 |
介護職員等処遇改善加算(Ⅲ) (新設) ※注4 | 所定単位数×79/1000 |
介護職員等処遇改善加算(Ⅳ) (新設) ※注4 | 所定単位数×63/1000 |
介護職員等処遇改善加算(Ⅴ) (新設) ※注4 | 所定単位数×89~33/1000 ※ 令和7年3月31日まで算定可能 |
高齢者虐待防止措置未実施減算 (新設) ※注5 | 所定単位数×1/100に相当する単位数を減算 |
業務継続計画未実施減算 (新設) ※注6 | 所定単位数×1/100に相当する単位数を減算 |
※注1 【算定要件等】
ア 認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上の者が利用者の2分の1以上
イ 認知症介護実践リーダー研修等修了者を認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上の者が20人未満の場合は1以上、20人以上の場合は1に、当該対象者の数が19を超えて10または端数を増すごとに1を加えて得た数以上配置
ウ 認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上の者に対して、専門的な認知症ケアを実施した場合
エ 当該事業所の従業者に対して、認知症ケアに関する留意事項の伝達または技術的指導に係る会議を定期的に開催
※注2 【算定要件等】
ア 認知症専門ケア加算(Ⅰ)のイ・エの要件を満たすこと
イ 認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者が利用者の100分の20以上
ウ 認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者に対して、専門的な認知症ケアを実施した場合
エ 認知症介護指導者研修修了者を1名以上配置し、事業所全体の認知症ケアの指導等を実施
オ 介護職員、看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、研修を実施または実施を予定
※注3 【算定要件等】
・利用者基準
イ 医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断した者
ロ 看取り期における対応方針に基づき、利用者の状態または家族の求め等に応じ、介護職員、看護職員等から介護記録等利用者に関する記録を活用し行われるサービスについての説明を受け、同意した上でサービスを受けている者(その家族等が説明を受け、同意した上でサービスを受けている者を含む)
・事業所基準
イ 病院、診療所または訪問看護ステーション(以下「訪問看護ステーション等」)との連携により、利用者の状態等に応じた対応ができる連絡体制を確保し、かつ、必要に応じて当該訪問看護ステーション等により訪問看護等が提供されるよう訪問入浴介護を行う日時を当該訪問看護ステーション等と調整している
ロ 看取り期における対応方針を定め、利用開始の際に、利用者またはその家族等に対して、当該対応方針の内容を説明し、同意を得ている
ハ 看取りに関する職員研修を行っている
※注4 令和6年6月1日施行。 介護職員等の確保に向けて、介護職員の処遇改善のための措置をできるだけ多くの事業所に活用されるよう推進する観点から、介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算について、現行の各加算・各区分の要件及び加算率を組み合わせた4段階の「介護職員等処遇改善加算」に一本化を行う。その際、1年間の経過措置期間を設けることとする。
※注5 【算定要件等】虐待の発生又はその再発を防止するための以下の措置が講じられていない場合
・虐待の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等の活用可能)を定期的に開催するとともに、その結果について、従業者に周知徹底を図る
・ 虐待の防止のための指針を整備する
・ 従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施する
・ 上記措置を適切に実施するための担当者を置く
※注6 【算定要件等】以下の基準に適合していない場合(2025年3月31日までの間、減算を適用しない)
① 感染症や非常災害の発生時において、利用者に対するサービスの提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(業務継続計画)を策定する
② 当該業務継続計画に従い必要な措置を講ずる
まとめ
訪問入浴介護は、介護者の負担を軽減できるだけでなく要介護者のリフレッシュや健康増進にも繋がります。
まずはケアマネージャー(要支援の場合は地域包括支援センター)に気軽にご相談ください。
こちらの記事を参考にして、ぜひ訪問入浴介護の利用を検討してみてください!
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