返戻 とは? 介護保険請求の仕組みについて

介護保険給付費を国保連合会へ請求したときに、請求した内容が「 返戻 」扱いとなり、介護給付費が支払われない場合があります。

『 返戻 とは何か』について知っておくことで、介護保険事業者の請求事務に携わる方も、ケアマネージャーとして携わる方も、返戻を通じて、介護保険における報酬支払いの仕組みの理解を深めておく必要があります。

返戻とは?

返戻 とは

介護保険は、利用者が介護サービス提供を受けたのち、介護事業者が報酬を国保連合会に請求します(一か月の介護報酬を、翌月=審査月の10日までに請求します)。

返戻とは、国保連合会へ請求した介護給付費請求明細書を審査した結果、不備が見つかり、介護事業者への支払処理が出来ないことを意味しています。

『介護サービス事業所からの請求情報』 『国保連の保有する台帳情報』

上記の情報を突合させた結果が一致しない場合に返戻となります。

返戻になると、介護給付費が支払われません。 返戻事由を確認・修正し再請求することになります。

ここでは、介護保険請求後の国保連での審査から、返戻となった場合の主な確認方法を解説していきます。

過誤調整の対処方法はこちら! 『過誤調整について 返戻との違いは』

国保連での審査

国保連では、次の情報を突合させて介護給付費の審査を行っています。

・給付管理票 (居宅介護支援事業所が提出) ※ただし施設系の場合は、給付管理票はありません

・介護給付費請求明細書 (サービス事業所が提出)

・受給者台帳 (保険者が提出)

・事業所台帳 (都道府県などが提出)

これらの情報で突合一致できないと返戻になります。

主な審査箇所は下記のとおりとなります。

・必要箇所への入力漏れ及び入力誤りがあるもの。

・請求明細書等の請求額に計算誤りがあるもの

・該当被保険者の資格に関する情報(受給者情報)、該当事業所の届け出情報等と突合して一致しなかったもの。

・請求明細書や給付管理票を重複して請求したものや登録されていない給付管理票に対して「修正区分」の給付管理票が提出されたもの。

・その他審査チェックでエラーとなったもの。

受給者台帳とは

被保険者に関する情報が登録されている台帳です。被保険者が認定を受けると作成されます。

・要介護度や有効期間などの認定情及び報負担割合情報

・担当の居宅介護支援事業所情報(もしくは介護予防支援事業所情報)

・負担限度額や社会福祉法人減免などの軽減対象情報

・住所地特例情報 など

事業所台帳とは

介護サービス事業所に関する情報が登録されている台帳です。都道府県や市区町村から事業所指定を受けると登録されます。

・事業所番号

・指定事業所、基準該当、地域密着、総合事業などの区分

・事業所のサービス種類に関する情報 など

返戻 になったら事由・種別・内容・備考の蘭を確認

国保連の審査で返戻となった場合は、「請求明細書・給付管理票返戻(保留)一覧表」が送られてきます。 一覧表の右端に「備考」欄があり、ここにエラーコードが記されています。

請求明細書・給付管理票返戻(保留)一覧表の見方

引用元:北海道国民健康保険団体連合会

返戻事由の欄

「事由」欄でも問題を特定できる可能性があるので、必ず確認しておきましょう。

事由はアルファベットA~Eで表示されています。

返戻事由Aの意味

必要箇所への入力漏れ及び入力誤りなどを確認する「一次チェック」という審査でエラーになると表示されます。 

返戻事由Bの意味

「受給者台帳、事業所台帳」と「請求明細書、給付管理票」を突合し、情報の不一致があった場合に表示されます。 また、過去に既に請求済みであったにもかかわらす請求してしまった場合や、給付管理票が登録されていないのにも関わらず給付管理票を修正をした場合なども事由Bとなります。 

返戻事由Cの意味

サービス事業所が提出した「請求明細書」と居宅介護支援事業所が提出した「給付管理票」が一致しなかった場合に表示されます。 この場合、エラーコードは返戻か保留となります。

返戻事由Dの意味

サービス計画費に対する給付管理票が未提出であった場合に表示されます。

区分変更中であった場合など、請求誤りでなければ給付管理票を再提出します。

返戻事由Eの意味

介護給付費等審査委員会で返戻となったもの。

種別の欄

どの帳票が返戻になったのかが確認できます。

 請:請求明細書(サービス計画費除く)

 サ:サービス計画費

 給:給付管理票

 ケ:ケアマネジメント費請求明細書(総合事業の計画費)

内容の欄

主な返戻または保留なった原因とコメントが示されています。 

返戻 が起こるよくある原因と事由

返戻 が起こるよくある原因事由と、エラーコード、対処法を以下に紹介します(エラーコードと返戻への対処法は、北海道国保連ホームページのQ&Aを参照しています)。

返戻が起こるよくある原因事由

Q1 「市町村の認定情報が未登録」(受給者情報) (12P0エラー)で返戻になりました。 返戻 一覧表には利用者の名前が表示されていません。

A1 利用者の介護保険被保険者証の保険者番号と被保険者番号を確認してください。 該当保険者に請求した被保険者番号の利用者は存在しません。誤りがあれば正しい番号で再請求してください。 誤りがなければ保険者へ確認してください。

主な要因としては、

①利用者の保険者番号と被保険者番号の入力誤り

 存在しない被保険者番号での請求のため返戻通知書に被保険者名が空欄で表示されています。

②保険者の受給者台帳の情報が間違っている などが挙げられます。

Q2 「市町村の認定変更が未決定」(12PAエラー) とは何ですか?

A2 利用者が要介護区分の変更を申請しています。 まだ新しい要介護度が確定していないため発生します。 確定後に再提出してください。 誤りがなければ保険者へ確認してください。

主な要因としては、

①当該利用者が、区分変更申請中であるため

②保険者の受給者台帳の情報が間違っている

③認定結果は確定しているが、保険者の受給者台帳が国保連へ届いていない

 保険者が審査月に国保連合会へ送っている受給者台帳は、審査月の前月中に認定結果が確定したものだけです。

 審査月に確定した認定年月日の受給者台帳情報は翌月に国保連へ送付されるため、「認定変更が未決定」ということで12PAのエラーとなります。

Q3 「認定有効期間外の被保険者」(12PDエラー) とは何ですか?

A3 すでに有効期間が切れているにも関わらず、有効期間外のサービス分を請求しています。 誤りがなければ保険者へ確認してください。

主な要因としては、

①要介護認定が有効期間が切れていないか確認しましょう。 有効期間外のサービス分を請求してしまっている可能性があります、期間が切れている場合は、再請求できません。

②保険者側の登録不備がある可能性があります。 保険者に問い合わせた後、情報の登録や修正を行った後に再度提出してください。 

Q4 以前提出した給付管理票の単位数に誤りがあったのでもう一度提出したところ、「過去に同じ給付管理票(新規)を提出済」(ANNJエラー) で 返戻 になったのですが。

A4 決定になった給付管理票の内容を変更する場合は、修正で提出しなければなりません。新規での提出は誤りです。

Q5 給付管理票に不備があって返戻になりました。その後、再提出をしましたが、「給付管理票の作成区分 (新規) での提出が必要」(ANN9エラー) で 返戻 になりました。なぜでしょうか。

A5 修正で給付管理票が提出されています。この場合、新規での提出が必要です。

Q6 「過去に同じ請求明細書を提出済」(ANN4エラー) で返戻になりました。 返戻 理由がわかりません。

A6 既に決定済みである請求明細書が再度提出されています。

例えば、

 ・ 前月分請求済の請求明細書データを再度提出してしまった。

 ・ 給付管理票の修正のみ提出すべきところ、サービス計画費も提出してしまった。

などがあります。誤って同じ請求明細書を提出してしまった場合は何もする必要はありません。 決定済みの請求明細書を訂正する場合、該当保険者に取り下げ (過誤申立) 依頼をします。(一度取消しをしなければ、訂正ができません。) 過誤決定通知書に利用者の名前があることを確認後、再請求してください。

Q7 「市町村の認定情報と不一致 (支援事業所)」(12P4エラー) と「市町村の認定情報と不一致 (作成区分)」(12P5エラー)とは何ですか?

A7 保険者から国民健康保険団体連合会に提出されている受給者台帳に居宅計画作成区分や支援事業所番号が登録されていない可能性があります。

主な要因としては、

要介護・要支援の認定を受け、在宅を中心としたサービスを利用するためには居宅サービス計画(ケアプラン)が必要です。 居宅サービス計画(ケアプラン)の作成を依頼する居宅介護支援事業者が決まったとき、または事業者を変更するときは、
保険者へ届出が必要ですが、居宅サービス計画作成依頼(変更)届出書による支援事業所の届出をしていない可能性があります。

保険者に届出されていていなければ請求はできません。  届出が遅い場合は、保険者の受給者台帳に反映されていない可能性もあるので、確認が必要です。

Q8 「必須項目が未設定」(ABB0エラー)とは何ですか?

Q8 本来記入すべき項目が入力されていません。

主な要因としては、

保険者番号や被保険者番号、サービス提供年月等の指定項目が正しく入力されていない可能性があります。 必須項目を確認し、正しい数値(又はアルファベット)を入力して、再請求しましょう。

Q9 「支援事業所に請求明細書に対応した給付管理票の提出依頼が必要」とは何ですか?

A9 支援事業所が作成する給付管理票が未提出又は返戻となっているため、サービス事業所の請求明細書が突合できず返戻となることです。

主な要因としては、

請求明細書に対応する給付管理票が提出されていない、または返戻になっています。 居宅介護支援事業所に給付管理票の提出依頼をしてください。 「保留」の場合は、請求明細書の再提出は不要ですが、「返戻」となっている場合は、請求明細書も再提出が必要です。

また、居宅介護支援事業所では、サービス事業所から、給付管理票の提出を依頼してきた場合、下記の確認を行い、適切に請求する必要があります。

返戻一覧表 ➔ 新規

・返戻一覧表に該当者の記載がある ➔ 提出したが何らかの理由で返戻

・返戻一覧表に該当者の記載がない ➔ 当初より未提出

増減単位数通知 ➔ 修正 での提出が必要になります。

Q10 支援事業所番号:市町村の認定情報と不一致(支援事業所)とは何ですか?

A10 市町村から国保連合会に提供される受給者台帳(利用者の情報)に登録されている支援事業支所番号と、給付管理票を提出されている支援事業所番号が違います。 支援事業所としての届け出の有無等を確認の上、再請求してください。

主な要因としては、

居宅介護支援事業所(または包括)が保険者に提出した「居宅サービス計画作成依頼届出書」の情報と、請求した居宅介護支援事業所が一致しない場合に12P4と12P5のエラーになります。

・給付管理票や請求明細書の事業者番号が間違っている

・別の居宅介護支援事業所が情報を更新している

・提出した「居宅サービス計画作成依頼届出書」情報が国保連合会に送られていない

A事業所からB事業所に該当日に居宅介護支援事業所が変更となる予定の場合に、B事業所が誤って該当日以外の開始年月日を記入して「居宅サービス計画作成依頼届出書」を出してしまった場合などや、提出された「居宅サービス計画作成依頼届出書」に記載されている居宅介護支援事業所の情報が、受給者台帳情報として、保険者から国保連合会へ送付されていない場合(基本的に審査月に送る情報は前月受付の情報)などです。

Q11 生活保護指定を受けていない事業所のため請求できません(10QEエラー)とは何ですか?

A11 生活保護指定を受けていない事業所であれば請求できません。 県及び中核市に生活保護指定事業者としての届け出を行ってから、再請求してください。

Q12 日数が期間を超えています (AEE2エラー)とは何ですか?

A12 実日 数が1か月の日数を超えている可能性があります。

主な要因としては、

・開始年月日から計算すると、算定可能な実日数を超えている

・入退所年月日から計算すると、算定可能な日数を超えている

・入所実日数と外泊日数の合計が1か月の日数を超えている

等の理由が考えられますので、日数を確認のうえ、再請求してください。

最後に

いかがでしたか?

介護報酬請求には、審査基準があるため、返戻となった場合には必ず理由があります。

請求事務は、確認を事前によく行うことで返戻を未然に防げるものも多く、また誤りがあった場合は、返戻に対して正しく対処することにより最悪の報酬の支払いが行われなくなる事態は防げます。

スムーズな保険請求のためにも、請求情報、給付管理票、台帳のどこに問題がありそうなのかを意識して、返戻理由を確認していきましょう。

まとめ

 

介護保険・障害福祉サービス事業所をサポートする

介護保険請求代行事業「株式会社須永商店」

当社では、毎月のサービス提供票(実績入力済)をFAXいただくだけで介護保険請求の代行業務を行っております。 

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