福祉用具 とは? 介護保険で利用できる福祉用具の種類や利用の流れを紹介
福祉用具 とは、介護や介助が必要な方の日常生活やリハビリ・機能訓練をサポートするための用具や機器のことです。 まず思い浮かぶのは「車いす」や「介護用ベッド」ではないでしょうか。
介護保険を利用できる福祉用具の種類や利用する際の費用、福祉用具を利用する際の流れなどについてご紹介します。
福祉用具 の定義や目的
福祉用具とは、身体が不自由な方の介護や介助をサポートする道具のことです。 主なものに車いすや歩行器、歩行補助つえ、手すりなどが挙げられます。 福祉用具は購入もしくはレンタルで利用出来ますが、介護保険の給付対象となり、自己負担額を抑えて利用できるものもあります。
福祉用具は「福祉用具法」において、以下のように定義づけられています。
「心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障のある老人又は心身障害者の日常生活上の便宜を図るための用具及びこれらの者の機能訓練のための用具並びに補装具をいう。」
引用元:厚生労働省
まず福祉用具専門相談員に相談
福祉用具を利用する際には、利用者にとって適切な用具を選択しなければ利用者の身体状態が悪化する可能性があるため、まずは専門家に相談しましょう。
都道府県の指定を受けた福祉用具貸与・販売事業所に配置されている福祉用具専門相談員が、福祉用具の説明や使用方法、適切な用具の選定についてアドバイスしてくれます。
介護保険で定められた 福祉用具 とは
介護保険において定められている福祉用具には、レンタルまたは購入の2種類で利用することができます。
レンタルできる 福祉用具 は13種類
介護保険制度を利用してレンタルできる用具は13品目あり、それぞれの福祉用具には介護度によってレンタルできる品目が異なります。
車いす | 対象:要介護2~5 車いすは、体幹や下肢などに障害がある方、長時間の歩行が困難な方が利用します(介護保険の対象になるのは、自走用標準型車いす 普通型電動車いす 介助用標準型車いす)。 車いすを利用することで、社会参加の促進や自力移動による自立心の向上、介護者の介護負担の軽減などが図れます。 |
車いす付属品 | 対象:要介護2~5 車いす付属品とは、クッション、電動補助装置等であって、車いすと一体的に使用されるものに限ります。 |
歩行器 | 対象:要支援・要介護1~5 歩行器は、歩行を補ったり体重を支えたりしてくれる道具です。 歩行器には、車輪が付いていない四脚の持ち上げ型歩行器と車輪が付いたものがあります。 なお、シルバーカーは、介護保険の対象にはなりません。 |
歩行補助つえ | 対象:要支援・要介護1~5 歩行補助つえは、松葉杖、カナディアンクラッチ、ロフストランドクラッチ、プラットホームクラッチ、多点杖などが対象です。 |
手すり | 対象:要支援・要介護1~5 手すりには廊下を歩行する際に利用するものや、椅子やベッドから立ちあがる際に補助するものなどがあります。ただし、取り付けに工事を伴わないものに限ります。 |
スロープ | 対象:要支援・要介護1~5 歩行する際や、車いすや歩行器を利用するときに段差を解消してくれる用具です。ただし、取り付けに工事を伴わないものに限ります。 |
特殊寝台 | 対象:要介護2~5 特殊寝台は、モーターの数で種類分けされており、1モータータイプは背上げのみ、2モータータイプは背上げと脚上げ、3モータータイプはさらにベッド自体の昇降ができます。4モーターでは頭の角度調整も可能です。 |
特殊寝台付属品 | 対象:要介護2~5 マットレス、サイドレール、介助用ベルト等であって、特殊寝台と一体的に使用されるものに限ります。 |
体位変換器 | 対象:要介護2~5 体位変換器は、寝返りなどの体位変換の介助負担を軽減してくれる道具です。体位変換器には、枕型やスネーク型などクッションタイプのものや、ベッド柵に固定し横向きの姿勢を保持するスライディングシートなどがあります。またエアマットの左右の空気圧を電動で周期的に変更できるものもあります。 |
床ずれ防止用具 | 対象:要介護2~5 床ずれ防止用具は、身体に掛かる圧力や摩擦、ズレをできるだけ小さくするための用具です。 複数の空気の筒(エアセル)などを膨張・収縮させることによって体を支持する面を変化させたり、より広い面で身体を支えたりすることで局所への外力を分散させて床ずれを防止させます。 床ずれ防止に有効な用具として、マットレス、クッション、体位変換器などがあります。 |
認知症老人徘徊感知機器 | 対象:要介護2~5 認知症老人徘徊感知機器とは、認知症である高齢者が屋外に出てしまうことを防ぐ目的で、センサーを利用して感知し家族等に知らせるものです |
自動排せつ処理装置 | 対象:排便機能が付いたもの…要介護4~5 その他のもの…要支援・要介護1~5 自動排泄処理装置は「特殊尿器」とも呼ばれており、寝たきりの方や自力での排泄が困難な方が利用する福祉用具です。 センサー感知によって排泄物の自動吸引ができ、介助者の負担軽減だけでなく、介護を受ける方が介助を依頼しなくても済むという心理的な負担も軽減できます(パッド/レシーバーなどの交換可能部分は別途購入が必要です)。 |
移動用リフト | 対象:要介護2~5 移動用リフトは、自力や車いすでの移動が困難な方が移動する際に使用する道具です(工事不要のものに限る)。 つり具部分は介護保険対象外です。 |
2024年度介護報酬改定 一部の福祉用具に係る貸与と販売の選択制の導入★(貸与・販売)
2024年4月1日より、固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く)、多点杖については貸与と販売の選択制が導入されます。
選択制の対象福祉用具の提供に当たっては、福祉用具専門相談員または介護支援専門員が、福祉用具貸与または特定福祉用具販売のいずれかを利用者が選択できることについて、利用者等に対し、メリットおよびデメリットを含め十分説明を行うとともに、利用者の選択に当たって必要な情報を提供すること、および医師や専門職の意見、利用者の身体状況等を踏まえ、提案を行います。
福祉用具の貸与について、選択制の対象福祉用具の提供に当たっては、福祉用具専門相談員が、利用開始後6月以内に少なくとも1回モニタリングを行い、貸与継続の必要性について検討を行います。
要支援・要介護1の方に対する 福祉用具 貸与
要支援や要介護1など軽度の方の場合であっても、要介護認定調査による判断や医師が必要と判断された場合には、例外的にレンタルすることができます。
特定 福祉用具 は5種類
福祉用具のうち、購入する必要があるものを特定福祉用具といいます。
特定福祉用具とは、排せつや入浴の際に使用する用具など、一度使用したものを別の人へ貸し出すことが難しい用具のことです。
対象商品にかかる購入費は介護保険の対象になります(支給対象者は要支援1~要介護5です)。 毎年4月1日~3月31日までの1年間で税込10万円と上限が設定されています。
腰掛便座 | 腰掛便座は、利用者の排泄の際に使用する福祉用具です。 便器からの立ち座り動作を補助するものや近場に設置することができるポータブルトイレなどがあります。 |
自動排せつ処理装置の交換可能部品 | 自動排せつ処理装置の交換可能部品とは、前述した自動排泄処理装置の直接肌に触れるレシーバー部分や、チューブ、タンク等、尿や便の経路となるものです。レシーバーには男性用と女性用があります。 |
入浴補助用具 | 入浴補助用具は、利用者の入浴を助けるためのものです。座位を保持したり、浴槽の出入りの補助をしたりするために利用します。 入浴用いす、浴室用手すり(工事が不要なものに限る)、浴室内いす、浴室内すのこ、入浴用介助ベルトなどがあります。 |
簡易浴槽 | 簡易浴槽は、利用者が居室などで簡単に入浴ができるよう、入浴動作を助けるためのものです(空気式又は折りたたみ式等で容易に移動できるものに限ります)。 |
移動用リフトのつり具部分 | 前述した移動用リフトのうち、利用者の身体に接するつり具部分は特定福祉用具に含まれます。移動用リフトのつり具には、脚分離型・シート型・セパレート 型(ベルト)の3種類があります。 |
2024年度介護報酬改定 一部の福祉用具に係る貸与と販売の選択制の導入★(貸与・販売)
特定福祉用具販売について、選択制の対象福祉用具の提供に当たっては、福祉用具専門相談員が、特定福祉用具販売計画の作成後、当該計画における目標の達成状況を確認します。
また、利用者等からの要請等に応じて、販売した福祉用具の使用状況を確認するよう努めるとともに、必要な場合は、使用方法の指導、修理等(メンテナンス)を行うよう努めます。
福祉用具 を利用するには?
福祉用具をレンタルするまでの流れは以下のとおりです。
- ケアマネジャー(要支援の場合は地域包括支援センター)に相談する。
- ケアマネジャーはケアプランを作成して福祉用具貸与事業者を選定します。
- 福祉用具専門相談員が利用者宅を訪問し、利用者や家族の要望の聞き取り、生活動作能力の確認、医療や環境、家族情報の確認を行います(福祉用具専門相談員は価格帯や機能が異なる複数の用具を提示し、利用者に対して選択の幅を広げることも義務付けられています)。
- 福祉用具専門相談員は、ヒアリングした情報をもとに「福祉用具貸与・販売計画」を作成します。
- 用具の内容を説明し、同意が得られたら契約締結、用具を納品、サービスが始まります。
- サービス開始後も、福祉用具専門相談員は定期的にモニタリングし、福祉用具が利用者に適切かどうかの確認やメンテナンスなどを行います。
福祉用具を選ぶときのポイント
- 福祉用具は、機能性や安全性の面でも、利用する方の身体のサイズに合ったものを選びましょう。
- 福祉用具は、利用者が用具に頼りすぎないよう自立をサポートしつつ、介護者の負担が軽減できるものを選びましょう。
福祉用具 の貸与や購入の際の注意点
福祉用具貸与や特定福祉用具販売においては、注意しなくてはならないポイントがあります。
都道府県指定事業所以外からの購入は介護保険の対象外
福祉用具をレンタルもしくは購入する場合には、都道府県から指定を受けた事業者からのレンタルや購入に限り介護保険が適用されます。
指定を受けていない事業者からのレンタルや購入の場合には、全額自己負担になるので注意が必要です。
介護保険で貸与している 福祉用具 でも購入すると介護保険給付対象外
介護保険を利用してレンタルできる福祉用具を購入したい場合、それは保険適用外になるので注意が必要です。
レンタルと購入両方が介護保険の対象になる福祉用具はないため、気をつけましょう。
購入しても定期的なメンテナンスは必要
ご自身で福祉用具を購入した場合には、点検や修理を購入者の責任で行う必要があります。購入した場合には、メンテナンス費用や修理費用が別途かかることも考慮しておきましょう。
しかし、用具をレンタルした場合は、修理や交換にもしっかり事業者が対応してもらえるメリットがあります。
福祉用具の貸与価格は要介護度により支給限度額が異なる
貸与価格は、要介護度により区分支給限度基準額が設定されています。
区分支給限度基準額には、福祉用具のレンタルだけでなくデイサービスや訪問介護などの費用も含まれるため、注意しましょう。
※訪問介護はこちらの記事で解説しています。
関連記事: 訪問介護事業所とは? サービスの内容を紹介!
※デイサービス(通所介護)については、こちらをご参照下さい。
関連記事: 通所介護 (デイサービス)とは? サービスの内容を詳しく解説!
【1ヵ月当たりの区分支給限度基準額】
要支援1 | 5,032単位(目安50,320円) |
要支援2 | 10,531単位(目安105,310円) |
要介護1 | 16,765単位(目安167,650円) |
要介護2 | 19,705単位(目安197,050円) |
要介護3 | 27,048単位(目安270,480円) |
要介護4 | 30,938単位(目安309,380円) |
要介護5 | 36,217単位(目安362,170円) |
※上記はめやすの金額です。お住まいの地域により若干変動します。
まとめ
福祉用具は、利用者の自立を促してくれるとともに、介護や介助が必要な方の日常生活や機能訓練をサポートするための用具です。
種類がたくさんあり選ぶことが難しいため、まずはケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談のうえ、利用者本人の身体に合ったものを選びましょう。
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