住所地特例 とは? 介護保険請求との関係について
介護保険では、原則として、被保険者の住所地市町村が保険者となりますが、介護保険施設、有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅に入所した時(住民票も施設所在地に変更する。)は、もともと住んでいた市町村が保険者となります。 これを、 住所地特例 と言います。
ここでは、住所地特例 について、制度の内容や介護保険請求処理はどうなるかなど分かりやすく解説します。
住所地特例 制度とは
介護保険においては、住所地の市町村が保険者となるのが原則とされています。ただ、その原則のみだと介護保険施設等の多く所在する市町村に給付費の負担が偏ってしまうことから、施設等の整備が円滑に進まないおそれがあります。このため、特例として、介護保険3施設 、特定施設、軽費老人ホーム、養護老人ホームに入所する場合には、住所を変更しても、変更前の市町村が引き続き保険者となる仕組み(住所地特例)を設けています。(その後、対象施設間を移動した場合にも、元の保険者が引き継がれます。対象施設以外に住所を移した場合、その住所地がある自治体が保険者に変わります)
住所地特例の対象施設
対象施設の大枠は下記のとおりとなります。
※対象施設について詳しい情報を知りたい方は、市のホームページなどをご参照ください。
- 介護保険3施設
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
- 特定施設
- 有料老人ホーム(介護保険の特定施設入居者生活介護の指定を受けていない住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅を含む)
- 軽費老人ホーム
- 養護老人ホーム
サービス付き高齢者向け住宅における住所地特例の扱い
サービス付き高齢者向け住宅においては、下記1、2の両方に該当する場合に、介護保険法第13条における「特定施設」となり、住所地特例の対象施設となります。
- 有料老人ホームに該当するサービス(食事、介護、家事、健康管理)を提供していること
- 地域密着型特定施設(※1)に該当しないこと
- なお、当該住宅に平成27年3月31日以前に入居した方は、住所地特例適用の対象外となります。
(※1)有料老人ホームであり、かつその入居者が要介護者及びその配偶者等に限られるもののうち、入居定員(サービス付き高齢者向け住宅においては、戸数)が29人(戸)以下であるもの
(※2)他区市町村の住所地特例対象施設へ入所又は入居される場合の手続きについては、入所(居)前区市町村の介護保険所管課へお問い合わせください。
地域密着型サービスにおける住所地特例の扱い
地域密着型サービスの事業所指定は、事業所が所在する市町村が行います。
このため、地域密着型サービスは、事業所が所在する市町村の被保険者のみが利用できますが、住所地特例者の方は、現住所地の市町村の地域密着型サービスの一部を利用することができます。
この場合、町外に転出されても保険者は異動前の保険者となります(この住所地特例者は、介護保険施設や特定施設に入所または入居されたとしても、住民票の異動がない場合は、住所地特例者とはなりません)。
※利用可能な地域密着型サービス
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
・認知症対応型通所介護
・小規模多機能型居宅介護
・夜間対応型訪問介護
・地域密着型通所介護
・看護小規模多機能型居宅介護
認知症高齢者グループホームは、高齢者ができる限り住み慣れた地域での生活が継続できるよう、地域の特性に応じた多様で柔軟なサービス提供が可能となるよう創設されたサービスであり、原則として住民のみが利用できるものとして構成していることを踏まえ、住所地特例の対象外とされています。
地域密着型サービスについては、こちらで詳しく解説しています。
関連記事:地域密着型 サービスとは? サービスの種類や特徴について解説
他市町村の地域密着型サービスの利用について
他市町村の地域密着型サービスの利用については、市町村間で協議し同意を得る必要があります。
市町村間の同意に係る協議は被保険者の申し出により行います。
申出の確認が得られた後、他市町村民の住民登録がある市長に相談のうえ、同意の手続きを行います。
他市町村から同意が得られた場合は、地域密着型サービス事業所は市町村に事業所指定の申請手続きを行っていただく必要があります。
なお、他市町村の地域密着型サービスの利用者の受け入れについては、各市町村で基準を設けているため、同意が得られない場合がありますので、事前に相談が必要です。
介護予防・日常生活支援総合事業( 総合事業 )の対象者の方における住所地特例の扱い
地域密着型サービスと同様に、2015年(平成27年)4月からは住所地特例の対象者に対する介護予防・日常生活支援総合事業と地域支援事業(要支援者など)を利用する場合は、施設所在地の市町村が行います。
例えば、保険者と異なる市町村に所在するサービス付き高齢者向け住宅に入居して、住民票をその施設に移した場合、住民票がある市町村のデイサービスや訪問介護などの利用も可能です。
介護予防・日常生活支援総合事業( 総合事業 )については、こちらで詳しく解説しています。
関連記事:介護予防・日常生活支援総合事業( 総合事業 )とは?
介護保険制度上の住所変更について
まずは、介護保険制度上の住所変更手続きの流れを見ていきます。
引っ越しにともない介護保険の住所変更手続きが必要になることがあります。 介護保険被保険者証を持っている65歳以上の人 又は、要介護・支援認定を受けている人は介護保険の住所変更手続きが必要です。
- 同一の市区町村内での引っ越しであれば、転出・転入届の提出は不要です。 この場合、転居届(住民異動届)の提出手続きなどが必要になります。 住民票の手続きにあわせて、介護保険被保険者証に記載している住所を役所の届出窓口(高齢者福祉課など)で変更手続きを行います。
- 同一の市区町村外に転居される場合は、転出・転入届の提出が必要です。 転入転出手続きに合わせ、旧住所の役所で介護保険被保険者証等を返納します(介護保険受給資格証が交付される)。 その後、新住所の役所に「介護保険受給資格証」を提出(転入日から14日以内に介護認定の申請を行う)。
※ 転入日から14日を過ぎると、再度、介護認定の新規申請をしなければならなくなります。
住所地特例 施設に入所して住所変更した場合の例
新居への引っ越しではなく、介護施設などの「住所特例対象施設」に入居する場合、住所変更は原則行いません。 施設入居前の自治体の介護保険に加入したままとなります。
以下に施設に入所して住所変更した場合の例を紹介します。
自宅から別の市町村の住所地特例施設に入所した場合
自宅(A市) | → | B市の住所地特例施設に入所し住所変更 | 住民票がB市でも介護保険の保険者はA市 |
別の市町村の住所地特例施設を2回移った場合
自宅(A市) | → | B市の住所地特例施設に入所し住所変更 | → | C市の住所地特例施設に入所し住所変更 | 住民票がC市でも介護保険の保険者はA市 |
住所地特例 対象者の介護保険請求処理について
サービス利用費の請求は介護保険被保険者証に記載されている保険者を確認の上、通常と変わらずに国保連に請求を行い、国保連側で保険者の区市町村に割り振り処理される形になっています。
ただ、住所地特例対象者が地域密着型サービスや総合事業のサービスを利用した際の請求において、明細書の記載誤り等のため返戻になるケースがあります。
◎通常の請求との相違点
・サービスコード・単位数等は「給付費明細欄 (住所地特例対象者 )」に記載
・給付費明細欄 (住所地特例対象者 )内の「施設所在保険者番号 」には、入所 (入居 )している施設の所在する保険者の保険者番号を記載する(保険証の保険者番号ではない)
※平成27年4月に見直された住所地特例に係る事務の概要を下記に添付します。
引用元:WAM NET 介護保険事務処理システム変更に係る参考資料(その5)(平成27年2月10日事務連絡)Ⅱ 介護予防・日常生活支援総合事業等関係資料 資料2
住所地特例 制度の対象者
・65歳以上の方
・40歳以上65歳未満の医療保険加入者(要支援・要介護度など介護認定がない自立の方も対象者に含まれます)
住所地特例 制度の手続き
住所地特例制度が適用される場合、住所変更前の市町村に対して所定の手続きを行います。
手続きには「住所地特例適用届」と「転出前の住所が記載されている介護保険被保険者証」が必要になります。
市町村によって手続きの方法が異なることがありますので、住所地特例制度を利用したい場合は、市役所の高齢福祉課などの担当窓口や、転居先の施設にご相談ください。
まとめ
いかがでしたか?
住所地特例制度は、介護給付費が増加する中で、市町村間の不均衡を調整するためにあるものです。
高齢者の転居に伴う介護給付費増加がないため、市町村においても介護保険利用割合がある程度予想しやすいというメリットがあります。
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