訪問介護の 特定事業所加算 とは? 算定要件について解説
訪問介護の 特定事業所加算 は専門性の高い人材の確保やサービスの質の向上に取り組む事業所を評価する加算です。 算定要件を満たすことで必然的に質の高いサービスを提供できる体制をつくれます。
こちらでは、最大で23%の増収が見込める取得必須の加算の算定要件について、詳しく解説していきます。
令和6年度介護報酬改定の主な事項について 引用元:厚生労働省

特定事業所加算 の算定要件
介護保険法における適用サービスは訪問介護と居宅介護支援になります。 訪問介護の特定事業所加算にはⅠ~Ⅴの5つの区分があり、それぞれ算定要件が異なります。
また、介護予防・日常生活支援総合事業における訪問型サービスは算定対象外です。
※訪問介護のサービス内容については、こちらで詳しく解説しています。
※居宅介護支援のサービス内容については、こちらで詳しく解説しています。
参考記事:居宅介護支援 とは? ケアマネジャーの役割について解説
※介護予防・日常生活支援総合事業のサービス内容については、こちらで詳しく解説しています。
参考記事:介護予防・日常生活支援総合事業( 総合事業 )とは?
算定要件に関しては、下表を参照ください。
算定要件 | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅳ | Ⅴ |
1.訪問介護員等・サービス提供責任者ごとに作成された研修計画に基づく研修の実施 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
2.利用者に関する情報又はサービス提供に当たっての留意事項の伝達等を目的とした会議の定期的な開催 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
3.利用者情報の文書等による伝達、訪問介護員等からの報告 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
4.健康診断等の定期的な実施 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
5.緊急時等における対応方法の明示 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
6.病院、診療所又は訪問看護ステーションの看護師との連携により、24時間連絡できる体制を確保しており、かつ、必要に応じて訪問介護を行うことができる体制の整備、看取り期における対応方針の策定、看取りに関する職員研修の実施等 | 算定要件13または算定要件6および14を満たす場合に算定可能 | - | 算定要件13または算定要件6および14を満たす場合に算定可能 | - | - |
7.通常の事業の実施地域内であって中山間地域等に居住する者に対して、継続的にサービスを提供していること | - | - | - | - | 〇 |
8.利用者の心身の状況またはその家族等を取り巻く環境の変化に応じて、訪問介護事業所のサービス提供責任者等が起点となり随時介護支援専門員、医療関係職種等と共同し、訪問介護計画の見直しを行っていること | - | - | - | - | 〇 |
9.訪問介護員等のうち介護福祉士の占める割合が30%以上、又は介護福祉士、実務者研修修了者、並びに介護職員基礎研修課程修了者及び1級課程修了者の占める割合が50%以上 | 〇 | 算定要件9または算定要件10を満たす場合に算定可能 | - | - | - |
10.全てのサービス提供責任者が3年以上の実務経験を有する介護福祉士、又は5年以上の実務経験を有する実務者研修修了者・介護職員基礎研修課程修了者・1級課程修了者 | 〇 | 算定要件9または算定要件10を満たす場合に算定可能 | - | - | - |
11.サービス提供責任者を常勤により配置し、かつ、基準を上回る数の常勤のサービス提供責任者を1人以上配置していること | - | - | 算定要件11または算定要件12を満たす場合に算定可能 | 算定要件11または算定要件12を満たす場合に算定可能 | - |
12.訪問介護員等の総数のうち、勤続年数7年以上の者の占める割合が100分の30以上であること | - | - | 算定要件11または算定要件12を満たす場合に算定可能 | 算定要件11または算定要件12を満たす場合に算定可能 | - |
13.利用者のうち、要介護4、5である者、日常生活自立度(Ⅲ、Ⅳ、M)である者、たんの吸引等を必要とする者の占める割合が20%以上 | 算定要件13または算定要件6および14を満たす場合に算定可能 | - | 算定要件13または算定要件6および14を満たす場合に算定可能 | - | - |
14.看取り期の利用者への対応実績が1人以上であること(併せて体制要件(6)の要件を満たすこと) | 算定要件13または算定要件6および14を満たす場合に算定可能 | - | 算定要件13または算定要件6および14を満たす場合に算定可能 | - | - |
特定事業所加算 算定における詳細な要件
上記表に基づき算定要件を詳しく解説していきます。
訪問介護員等・サービス提供責任者ごとに作成された研修計画に基づく研修の実施
訪問介護員等およびサービス提供責任者の資質向上のため、個別具体的な研修の目標、内容、研修期間及び時期を定め、実施する必要があります。
会議の開催
おおむね1ヵ月に1回以上、会議を定期的に開催しなければなりません。
- 会議の目的
- 利用者に関する情報、もしくはサービス提供にあたっての留意事項の伝達
- 訪問介護員等の技術指導
- 会議の具体的な要件
- 会議はサービス提供責任者が主催する
- 会議には登録ヘルパーも含めたすべての訪問介護員等が参加する
- ただし、1回の会議で全員を集める必要はなく、グループ別の会議でもOK
- 議事録を作成し保管する
- 注意事項
- 参加していない訪問介護員が議事録を確認したとしても、会議の場に参加していなければ、要件を満たしたことにはなりません
- 令和3年の介護報酬改定により、会議はテレビ電話等のICTの活用が可能となりました
文書などによる指示およびサービス提供後の報告
サービス提供責任者は、サービス開始前に「利用者情報」や「サービス提供時の留意事項」を文書などの確実な方法で訪問介護員に伝達し、サービス提供後に訪問介護員から適宜報告を受けなければなりません。
さらに指示・報告内容は文書で保管しておくことも求められます。
厚生労働省によると、少なくとも下記事項の記載が必要とされています。
- 利用者のADLや意欲
- 利用者の主な訴えやサービス提供時の特段の要望
- 前回のサービス提供時の状況
- その他サービス提供に当たって必要な事項
※「前回のサービス提供時の状況」以外は変更があった場合のみ記載するのでも構いません。
また、「前回のサービス提供時の状況」については毎回の記載が必要です。
この際「特変なし」などの伝達内容では、実質的に伝達が行われていないものとして報酬返還の対象となる可能性があるため注意しておきましょう。
伝達方法は直接面接しながら、文書を渡すほか、FAXやメール、LINE等でもOKです。
指示・報告は「毎回のサービスごと」ではなく「まとめて」でもOKです。
定期的な健康診断の実施
毎年1年に1回、事業所負担で、非常勤職員を含むすべての訪問介護員等に健康診断を実施する必要があります。
緊急時対応について利用者への周知
事業所における緊急時の対応方法について利用者に明示する必要があります。「重要事項説明書」に明記して利用者へ説明、交付でOKです。
明示内容は下記のとおりです。
- 緊急時の対応方針
- 緊急時の連絡先
- 対応可能な時間
看取り期への対応体制を整備
加算Ⅰもしくは加算Ⅲを算定する場合は、看取り期における対応体制の整備が求められます。
要件13の重度利用者の割合を満たしている場合は、代わりに適用することも可能です。
- 看取り期の対応体制
- 病院や診療所、訪問看護ステーションの看護師との連携により24時間連絡できる体制を確保し、必要に応じて訪問介護をおこなえる体制を整備している
- 看取り期における対応方針を定め、利用開始時に利用者またはその家族等に当該方針を説明のうえ、同意を得ている
- 看取り期の対応方針について、医師、看護職員、訪問介護員等、ケアマネジャーなど、多職種による協議のうえ、看取りの実績等を踏まえて適宜見直しをおこなう
- 看取りに関する職員研修を実施している
中山間地域等居住者への継続的なサービス提供
訪問介護事業所の通常の事業実施地域の範囲内で、中山間地域等に居住する利用者に継続的に訪問介護サービスを提供している必要があります。
中山間地域とは、山間地およびその周辺の地域のことを指します。
実績は、前年度(3月を除く)、または届出月の前3ヶ月の1ヶ月あたりの平均で1人以上であること。訪問介護事業所から利用者の居宅までの移動距離が片道7キロメートルを超える場合のみ、対象となります。
多職種共同による訪問介護計画の随時見直し
利用者の心身の状況や家族等を取り巻く環境の変化を踏まえ、訪問介護員等やサービス提供責任者、その他地域の関係者が共同し、訪問介護計画の随時見直しが求められます。
都度すべての職種が関わる必要はなく、見直しの内容に応じて適切なメンバーが関わば算定が可能です。
訪問介護員等における有資格者の割合 及び サービス提供責任者の実務経験年数
加算Ⅰを算定する場合、以下の要件を満たす必要があります(加算Ⅱを算定する場合は「訪問介護員等における有資格者の割合」 又は 「サービス提供責任者の実務経験年数」のいずれかを満たせば算定可能です)。
- 訪問介護員等・・・介護福祉士の占める割合が30%以上
- 訪問介護員等・・・介護福祉士、実務者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、1級課程修了者の占める割合が50%以上
- サービス提供責任者・・・3年以上の実務経験がある介護福祉士
- サービス提供責任者・・・5年以上の実務経験がある実務者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、1級課程修了者
サービス提供責任者の配置および訪問介護員等の勤続年数とその割合
加算Ⅲおよび加算Ⅳを取得する場合は下記のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 常勤のサービス提供責任者を配置し、基準を上回る数の常勤のサービス提供責任者を1人以上配置
- 訪問介護員等の総数のうち、勤続年数7年以上の占める割合が30%以上
重度利用者の割合
加算Ⅰもしくは加算Ⅲを算定する場合、下記の要件を満たす必要があります。
看取り期の対応体制を整備し、要件6及び14を満たしている場合は、本要件を満たす必要はありません。
- 利用者のうち、要介護4以上、日常生活自立度Ⅲ・Ⅳ・M、たんの吸引等を必要とする利用者の占める割合が20%以上
特定事業所加算 の単位数
特定事業所加算 にはⅠ~Ⅴがあり、各加算率が設定されていますが、Ⅰ~ⅣとⅤは併算定が可能です。

- 特定事業所加算Ⅰ:所定単位数×20/100
- 特定事業所加算Ⅱ:所定単位数×10/100
- 特定事業所加算Ⅲ:所定単位数×10/100
- 特定事業所加算Ⅳ:所定単位数×3/100
- 特定事業所加算Ⅴ:所定単位数×3/100
まとめ
いかがでしたか?
特定事業所加算は最大で23%の加算が見込めます。
要件を満たしている、または要件を満たせそうな場合は、ぜひ加算の算定を目標にチャレンジしてみてください。

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