居宅介護支援 とは? ケアマネジャーの役割について解説

居宅介護支援 は、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、介護支援専門員(以下、ケアマネジャー)が、利用者の心身の状況や置かれている環境に応じた介護サービスを利用するためのケアプランを作成し、そのプランに基づいて適切なサービスが提供されるよう、事業者や関係機関との連絡・調整を行うサービスです。

この記事では、居宅介護支援で受けられるサービスの内容や利用方法、2024年度介護報酬改定の内容まで解説します。

居宅介護支援とは

居宅介護支援 の主なサービス内容

居宅介護支援事業所にはケアマネジャーがおり、介護保険制度に基づき介護が必要な方や、要介護状態が悪化しないようにケアプラン作成を行ってくれます。

ケアマネジャーは、介護支援専門員としての資格取得が必要で、介護・医療・福祉分野の資格を持ち、5年以上の実務経験が必要となります(ケアマネジャーとしての実務経験が5年以上あれば、上位資格である主任介護支援専門員の研修を受けることができます)。

居宅介護支援のサービス内容は下記のとおりです。

居宅介護支援のサービス内容

ケアプランの作成

ケアプランとは、ご利用者が要介護度やニーズ、置かれた環境に見合った適切な介護サービスを受けるために作成される計画書です。作成にあたっては、ケアマネジャーが介護サービス事業者や関係機関との連絡・調整を行ってくれます。

「訪問介護を週に2回、通所介護を週1回利用したい」など、一人ひとりのニーズに沿って立案されます。 また、特定のサービスや事業者に偏ることがないよう、ケアプランの作成においては公正中立に行うこととされています。

モニタリング・ケアプランの見直し

実際にサービスの利用が始まると、その後はケアマネジャーが月1回以上の訪問と面接を行い、長期的にフォローしていきます。 提供されている介護サービスがご利用者のニーズに沿っているか、品質に満足しているかなどを適宜モニタリングします。場合によっては、ご利用者の心身状況、生活環境の変化に合わせてケアプランの内容を見直します。

介護・サービスに関わる相談

居宅介護支援事業所では、ケアプランを作成するだけでなく、介護保険に関する説明、要介護認定の申請手続き代行、住宅改修サービス利用までの段取りなど、ご利用者やご家族からの介護に関するさまざまな相談に応じてくれます。

要介護認定申請・更新の手続き

介護サービスや介護予防サービスを利用するには、自治体の介護保険申請窓口で要介護(支援)認定を申請しなければなりません。

利用者や家族が自身でおこなうこともできますが、さまざまな事情で難しい場合、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが申請代行をおこないます。

また、すでに要介護認定を受けた方の介護度区分変更申請や更新申請に係る手続きも代行してくれます。

居宅介護支援 の利用対象者

居宅介護支援の利用対象となる方は、自宅などで生活する高齢者で、要介護認定において要介護1~5と判定された方です。

要支援1・2と判定された場合は、介護予防支援サービスが受けられます。 市町村が設置する地域包括支援センターが介護予防サービス・支援計画書(介護予防プラン)を作成しサービスの調整を行います。

なお、地域包括支援センターが介護予防支援業務を居宅介護支援事業所に委託している場合は、要支援1・2の方も居宅介護支援事業所を利用することが可能です。

利用対象者

居宅介護支援 を利用する流れ

  1. 要介護認定を受ける
    • 居宅介護支援を利用するためには、要介護認定を受けている必要がありますが、前述したように要介護認定申請もケアマネジャーが代行することが可能です。
    • 申請手続きは、お住いの市区町村の担当窓口になります。
  2. 居宅介護支援事業者を選ぶ
    • 要介護認定申請を自身で行った場合は、都道府県から指定を受けている居宅介護支援事業者リストの中から選びます。
  3. 契約
    • 支援事業所が決まったら、重要事項の説明を受け契約書締結、ケアマネジャーが選任され居宅介護支援サービス利用開始となります。
  4. ケアプラン作成
    • 担当のケアマネジャーが選任されれば、いよいよケアプランの作成が開始されます。 
    • アセスメント
      • ケアプランを組み立てる前に、被介護者の生活環境や状態の把握を目的とした情報収集をを行います。 健康状態の確認や、普段の生活態度や現在の精神状態、さらには家族の状況を含めた細かい聞き取り調査が行われます。
         
        その後、話しあいを行い、本人にとって最適なケアプランの原案を作成していきます。 
    • サービス担当者会議
      • サービス担当者会議では、被介護者を含む家族と、ケアマネジャー、各サービス事業者が一堂に会し、ケアプランの原案に記載されたサービス内容に問題がないかどうか精査したり、情報交換を行ったりします。
      • サービス担当者会議での話し合い後、ケアマネジャーから被介護者と家族に最終確認が行われ、内容を承諾すると正式なケアプランが作成されます。
  5. 介護保険サービスの利用スタート
    • ケアマネジャーを通してサービス事業者との契約を行い、ケアプランに基づいたサービスの利用を開始します。
  6. サービスが開始された後には、ケアマネジャーによる定期訪問によって内容が現状にあっているか確認が行われます。(必要に応じてプラン変更を行います)

居宅介護支援 サービスの費用

居宅介護支援サービスに関する費用は、原則介護保険から給付されるため、ご利用者の自己負担はありません。

居宅介護支援・介護予防支援の2024年介護報酬改定内容

下記に、2024年4月より改定される介護報酬の内容を記しておきます。

令和6年度介護報酬改定の主な事項について

引用元:厚生労働省

居宅介護支援費Ⅰ

要介護1・2要介護3・4・5
居宅介護支援(ⅰ)取り扱い件数45件未満1,086単位(1,076)1,411単位(1,398)
居宅介護支援(ⅱ)取り扱い件数45件以上60件件未満544単位(539)704単位(698)
居宅介護支援(ⅲ)取り扱い件数60件以上326単位(323)422単位(418)

居宅介護支援費Ⅱ

要介護1・2要介護3・4・5
居宅介護支援(ⅰ)取り扱い件数50件未満1,086単位(1,076)1,411単位(1,398)
居宅介護支援(ⅱ)取り扱い件数50件以上60件件未満544単位(539)704単位(698)
居宅介護支援(ⅲ)取り扱い件数60件以上326単位(323)422単位(418)

※指定居宅サービス事業者等との間で居宅サービス計画に係るデータを電子的に送受信するためのシステムの活用及び事務職員の配置を行っている事業所

介護予防支援費

介護予防支援費(Ⅰ)※地域包括支援センターのみ442単位(現行:438単位)
介護予防支援費(Ⅱ)※指定居宅介護支援事業者のみ472単位(新設)

居宅介護支援の各加算・減算

初回加算300単位/月(変更なし)
特定事業所加算(Ⅰ) (※1)519単位/月(現行:505単位)
特定事業所加算(Ⅱ) (※1)421単位/月(現行:407単位)
特定事業所加算(Ⅲ) (※1)323単位/月(現行:309単位)
特定事業所加算(A) (※1)114単位/月(現行:100単位)
特定事業所医療介護連携加算125単位/月(変更なし)
入院時情報連携加算(Ⅰ)250単位/月(現行:200単位/月)
入院時情報連携加算(Ⅱ)200単位/月(現行:100単位/月)
退院・退所加算(Ⅰ)450~600単位/月(変更なし)
退院・退所加算(Ⅱ)600~750単位/月(変更なし)
退院・退所加算(Ⅲ)900単位/月(変更なし)
通院時情報連携加算 (※2)50単位(変更なし)
緊急時等居宅カンファレンス加算200単位/1月に2回を限度(変更なし)
ターミナルケアマネジメント加算400単位(変更なし)
特別地域加算
 別に厚生労働大臣が定める地域(※3)に所在する事業所が、サービス提供を行った場合
所定単位数に15/100を乗じた単位数
中山間地域等における小規模事業所加算
 別に厚生労働大臣が定める地域(※4)に所在する事業所が、サービス提供を行った場合
所定単位数に10/100を乗じた単位数
中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算
 別に厚生労働大臣が定める地域(※5)に居住する利用者に対し、通常の事業の実施地域を越えて、サービス提供を行った場合
所定単位数に5/100を乗じた単位数
業務継続計画未実施減算 (※6)施設・居住系サービス 所定単位数の100分の3に相当する単位数を減算(新設)
その他のサービス 所定単位数の100分の1に相当する単位数を減算(新設)
高齢者虐待防止措置未実施減算(※7)所定単位数の100分の1に相当する単位数を減算(新設)
同一建物に居住する利用者へのケアマネジメント(※8)所定単位数の95%を算定(新設)
運営基準減算・運営基準減算の場合 ×50%(変更なし)
・運営基準減算が2月以上継続している場合は算定しない(変更なし)
特定事業所集中減算-200単位/月(変更なし)

※1 特定事業所加算の算定要件について以下の見直しを行う。

 ア 「ヤングケアラー、障害者、生活困窮者、難病患者等、他制度に関する知識等に関する事例検討会、研修等に参加していること」を要件とするとともに、評価の充実を行う。
 イ (主任)介護支援専門員の専任要件について、居宅介護支援事業者が介護予防支援の提供や地域包括支援センターの委託を受けて総合相談支援事業を行う場合は、これらの事業との兼務が可能である旨を明確化する。
 ウ 事業所における毎月の確認作業等の手間を軽減する観点から、運営基準減算に係る要件を削除する。
 エ 介護支援専門員が取り扱う1人当たりの利用者数について、居宅介護支援費の見直しを踏まえた対応を行う。

※2 2024介護報酬改定後の算定要件 利用者が病院又は診療所において医師又は歯科医師の診察を受けるときに介護支援専門員が同席し、医師又は歯科医師等に対して当該利用者の心身の状況や生活環境等の当該利用者に係る必要な情報の提供を行うとともに、医師又は歯科医師等から当該利用者に関する必要な情報の提供を受けた上で、居宅サービス計画に記録した場合は、利用者1人につき1月に1回を限度として所定単位数を加算する。

※3 ①離島振興対策実施地域、②奄美群島、③振興山村、④小笠原諸島、⑤沖縄の離島、⑥豪雪地帯、特別豪雪地帯、辺地、過疎地域等であって、人口密度が希薄、交通が不便等の理由によりサービスの確保が著しく困難な地域

※4 ①豪雪地帯及び特別豪雪地帯、②辺地、③半島振興対策実施地域、④特定農山村、⑤過疎地域

※5 ①離島振興対策実施地域、②奄美群島、③豪雪地帯及び特別豪雪地帯、④辺地、⑤振興山村、⑥小笠原諸島、⑦半島振興対策実施地域、 ⑧特定農山村地域、⑨過疎地域、⑩沖縄の離島

※6 令和7年3月31日までの間、感染症の予防及びまん延の防止のための指針の整備及び非常災害に関する具体的計画の策定を行っている場合には、減算を適用しない。 訪問系サービス、福祉用具貸与、 居宅介護支援については、令和7年3月31日までの間、減算を適用しない。

※7 算定要件(以下の措置が講じられていない場合)

 ・虐待防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等の活用可)を定期的に開催し、従業者へ周知徹底
 ・虐待防止の指針を整備
 ・従業者への、虐待防止のための研修の定期的実施
 ・上記措置を実施するための担当者の設置

※8 算定要件(対象となる利用者)

 ・ 指定居宅介護支援事業所の所在する建物と同一の敷地内、隣接する敷地内の建物又は指定居宅介護支援事業所と同一の建物に居住する利用者
 ・ 指定居宅介護支援事業所における1月当たりの利用者が同一の建物に20人以上居住する建物(上記を除く)に居住する利用者

まとめ

居宅介護支援事業所は、支援が必要な人と介護サービスをつなぐ架け橋のような役割を担っています。

要介護状態になると、様々な介護保険サービスを利用できますが、どのようなサービスがあり、どの程度利用できるのか、専門的な知識がなければ正確に理解するのは難しい制度です。

そんなときに相談できるのが居宅介護支援事業所です。 

今後の介護について不安を感じている場合は、一人で悩みを抱え込まず、専門家に相談してみるのも一つの方法です。 

まとめ

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